ランス大爆発。鬼漕ぎでブッチギリ

honkaku2003-07-22

ツール・ド・フランス、第十二ステージ。
今年のツール・ド・フランスは、プロローグから連日猛暑。猛暑というか酷暑である。
ファッサボルトロのチームは半分以上がリタイヤ、ほかのチームも健康管理が出来ずに次々と脱落者を出している。
そんななか、ツール・ド・フランス総合優勝四連覇中のランス・アームストロング。彼は癌を克服してからツール優勝を毎年の目標として、ここまで圧倒的な強さで連覇を遂げてきた。そんな彼も今年の酷暑にやられたのか、マイヨ・ジョーヌを着ているものの、強さがいまひとつの様子。個人TTで、ビアンキウルリッヒにかなりの秒数を稼がれてしまい、昨日の山岳でもゴールは先に越されてしまい、現在その秒差はわずか7秒。黄色ジャージは誰が袖を通してもおかしくない展開である。

今日は山岳ステージ三日目、ピレネー越えはツールの中でも一二を争う人気ステージだと思う。
 なぜならば、1.山岳ステージをこなすには、体力・気力・テクニックなど、自転車乗りとして必要な様々な要素を要求され、個人総合・チーム総合などの順位が激しく入れ替わる可能性があること。
 2.観客側から見ると、山岳を登ってくる選手達はスピードが落ちるので、絶好の観戦ポイントとなる。また、必死の形相で登ってくる選手達の表情は、観客達にこみ上げる何かを提供するから。
 3.また、ピレネーは地理上スペインと国境が隣接しており、コースの一部がスペインに進入するような形で設定されているので、スペイン人の観客が多い(事が多いと思います.一部のファン向けなのかしら)
 4.スペインとフランスの国境周辺に住んでいる「バスク人」と呼ばれる人々の存在。彼らの悲願(?)である「バスク人の国家建設」の情熱を全世界にアピールできる、またとないチャンスであること。あと、多分バスク人は熱狂的な人が多そうだから(笑)

まぁ、ざっと冗談半分に項目を挙げるだけでこんなに出てきた。
そうなんだよなぁ「山岳は何かが起きる!」という形の無い期待感に包まれているからなんだろうなぁ。
で、山岳といえば、95年に下りカーブを曲がりきれずに崖から転落死した選手というのも居るわけで、選手からしたら生死と隣りあわせで走ってくるわけですな。そういう歴史が延々と続いているからこそのツールであり、山岳ステージなんでしょう。

この日の山岳コースは超級越えの大舞台。連日の疲れが残っている選手を、容赦なくふるいに掛けるよな山を二つ越え、しかもゴールが山頂ゴール!最後の最後まで選手達は苦しめられることになる。
中盤から登りがどんどんキツくなり、坂の途中でもがく選手達。がんばれがんばれ!応援する方としても力が入ってしまうなぁ。スイスイと登る選手はほとんどいない。必死の形相で足を回しても、段々と回転数が落ちてしまう選手、座って漕げなくなって、立漕ぎになる選手、それでもどんどんと集団から遅れていく選手…勝負の世界は非情でありますな。

さて、最終の超級頂上がゴールに設定されたこのステージ。事件はこの最後の登坂で起きた。
まず大逃げしていたブリオッシュの選手が登っていった。遅れて少人数のグルペット。(集団の意。単にグルペットという場合は、マイヨ・ジョーヌを含めることが多い)山岳をいくつも越えてきたので、集団も千切れ気味である。しかしアームストロング、ウルリッヒ、山岳に強いマヨなどが、ガンガン登っていく。
と、その時、観客でごったがえす沿道ギリギリを走っていたランスが突然転倒。コケた理由はどうやら子供の持っていたサコッシュ(選手の昼飯を入れた袋・このコが持ってたのはレプリカ?)にハンドルが引っ掛かったから。うわー!コケた〜〜〜!とまぁ、沿道も実況も、多分チームカーの中の人も絶望的な気分に沈んだわけだ。だって二位のウルリッヒとのタイム差はほとんど無いから。

写真は「マヨを巻き込んでコケたアームストロング」ですが、ウルリッヒも危なかった。すぐ後ろを走ってたからなー。選手の距離感覚ってすごいんだけど、落車があると大惨事になるよね。

さて、コケたアームストロングとマヨを尻目に、ウルリッヒは登っていったんだけど、この時いかにもツールらしい事がありました。ウルリッヒはアームストロングがコースに復帰するまで、後ろを振り返ってスピードを落として待っていたのです。
私は過去のツールは不勉強ですが、過去にウルリッヒとランスが下りを攻めていたとき、ウルリッヒがコースアウトして、その時ランスが待っていてくれたのを、ウルリッヒは思い出したのでは?というのが野次馬の噂になっておりまして。ほぉぉ、自転車競技って奥深いというか、人間臭いというか・・・いいよね、そういうエピソードって。

コケたランス(とマヨ)をじっと待っていたウルリッヒ。ランス達が復帰したので、再び山を登っていったのですが、ここでランスがブチ切れた!!
何を思ったか、それともここがアタックチャンスと思ったのかは知らないけれど、コケる前とは明らかに違う回転数でペダルを踏み出した。ランスは普段からケイデンスは多めの漕ぎ方ですが、山岳では立ち漕ぎで一生懸命登っているのに・・・やおら別人モードです。あんた鬼や。
マヨ・ウルリッヒをみるみるうちに追い抜き、必死の形相でブリオッシュの選手を追います。